消したい思い出を持ってる方は たくさんいらっしゃると思いますが。。。
実は、意外にも人の記憶は間違いだらけで、自分に強い影響を与えているはずのトラウマですら、本当は「存在しない過去」の場合がある。
記憶は毎日書き換わる
結論から言うと
人の記憶は書き換えることができるし、書き換わりは誰でも起こる(既に起こっている)可能性があります。
もっと言えば、僕らの記憶は 本人の都合のいいよう常に修正されている☆★
まわりのみんなとも共有しているはずの その思い出は、はたして本物なのでしょうか?
てことで、今回は!
「自分、あるいは他人の記憶を書き換える方法」と「日常的に それが起こっている そもそもの理由」の解説〜
前回は 記憶が書き換わる「仕組み」と「条件」を解説しましたが、これは今回の話を理解するための予備知識にもなりますので、
興味がありましたら〜↓
「過去の思い出は常に変化している|記憶の仕組み」
・本日の参考著書
つくられる偽りの記憶|あなたの思い出は本物か?
著者:臨床心理士・越智 啓太(元 警視庁科学捜査研究所 所属)
基本の仕組み〜
前回のおさらいをしつつ、まずは記憶が どのようにして書き換わっていくのか 簡単に説明します〜
ニセの記憶(フォールスメモリー)が定着する基本的な仕組みは、
自分が思い出していることが「実在の過去の記憶」なのか「自分で ただ想像しただけのこと」なのかを、脳が区別できなくなってしまった場合に それが起こります*
その条件として「そんなことも あったかもなぁ」とか、本人が その出来事が起こる可能性をほんの少しでもいいので信じている必要があります。
(そんな過去なんてない!と はじめは否定していて、あとから「やっぱり ありかも?」と気持ちが変わった場合も含む)
ほんの少しの可能性でもよい、ということは・・・
日常で起こりやすそうなことや、自分が信じていること(宗教や怪奇現象なども含む)に関連することは、フォールスメモリーに特になりやすいです。
また 僕らの想像力は とても優れていて、過去のあらゆる記憶の断片を合成してイメージを創る(妄想する)こともできます☆
なので、(記憶の合成による)リアルな妄想が得意な人ほど
お化けを見たとか、宇宙人に誘拐されたなどの常識では考えられないような体験も、フォールスメモリーとして生成しやすい。
というところまでが、前回のお話*
(詳細な話は、記事を参照してくださいませ)
ちなみに、この脳の誤機能のことを「ソースモニタリングエラー」といいます。
思い出の規模
可能性を信じる度合いは「ほんの少し」で よくても、
フォールスメモリーとして記憶される「出来事」の規模?に限界はありません。
日常では ありえなそうな、とんでもないことでも間違って記憶してしまう可能性があるということ。
たとえば。。。
事故で 他人の内蔵が飛び出してしまうのを目撃してしまい、
それがトラウマの記憶になってしまった人が、実は それを見ていないどころか、その事故現場にすら いなかったことが判明したり
近所の住人に おそわれた女性が 警察に届け出て、その男性は逮捕されたが、それがフォールスメモリーだと判明して 後々釈放されたり。
(おそわれたのは事実だが 女性は頭の中で、真犯人の顔と 近所の男性の顔を合成してしまい「あの男で、100%間違いありません」と、警察に証言している)
※ワシントンDC:ウォルター事件
こういったヤバすぎる内容でも フォールスメモリーになるし、本人は それが存在しない過去であることに気づくことはできません。
フォールスメモリーができるまで
で、ここからが今回のテーマ「自分、あるいは他人の記憶を書き換える方法」と「日常的に それが起こっている そもそもの理由」の解説になります。
方法と理由を、一言で表すのであれば
☆想像(妄想)をくり返すほど、フォールスメモリーは定着しやすくなる
☆「今の自分の心を安定させるために」記憶の書き換えは、日常的に起こっている
って感じ。
思い出す機会が多いから
では 早速、記憶を書き換える方法を解説していきます。
・・・と言っても「(ありもしなかった過去を、実在すると信じながら)想像をくり返すこと」が、その方法だと もう答えを示してしまっているので
「実際には起きていない出来事(過去)を、なぜ想像してしまうのか?」ここを深堀りしてみましょう。
まず すべての始まりとなるのが「物事を思い出そうとすること」です。
まぁ過去を思い出そうとするキッカケなんて、日常でいくらでもありますけども〜
と、言うことはですよ?
それだけフォールスメモリーが定着してしまう機会も多いってことです*
学校や職場などで先週の出来事について話したり、アンケートや聞き取り調査で質問されたり、ふと自分の過去をふり返ったり。。。
その思い出そうとする内容が「実在の過去」なのか「ただの想像(妄想)」なのか、ここがポイントになります☆★
もしも、ただの想像上の出来事だったにも関わらず「あんなこともあったなぁ」とか「言われてみれば そうかもなぁ」と感じるようなら、もう その時点でフォールスメモリーは定着しはじめています。
はじめは多少の疑いがあったとしても、その出来事を 何度か想像している内に、自然に確信にかわっていきます。
※注意
なんでもかんでも 想像さえすれば、記憶が書き換わるわけじゃありません。
もちろんフォールスメモリーとして定着しないこともございます。
よくある話なんです*
え? でも、ありもしなかったことを思い出そうとする機会なんてなくない?
そんな疑問もあるかと思いますが、これがけっこうあるんですよ〜
今回は、間違った過去を思い出そうとしてしまう原因が
「自分の内側(思考)にあるパターン」と、「外部からの影響を受けるパターン」の2つに分けて説明していきます*
原因が必要なら、自分で創ればいい
まずは原因が、自分の内側(思考)にあるパターンの例「ツジツマ合わせ」について〜
たとえば「人前で話すのが苦手」という悩みを抱えていたとして、その原因を探す際には、ほぼ必ず過去をふり返ることになると思います。
そして過去をふり返ることで「あんな出来事があったから、人前で話すのが苦手になったんだよなぁ」と自分を納得させることができるわけですが。。。
その原因となっている過去の出来事・思い出が、フォールスメモリーである可能性があります★
言い方を変えると、人前で話すのが苦手であることの「ツジツマを合わせるために」イヤな出来事の思い出(原因)を、自分で創り出してしまうってこと。
これについては、のちほど「トラウマ」をテーマに説明いたします〜
もう1つ例をあげてみます。
知らない内に体にアザができていたことに気づいたとして、当然原因は過去にありますから、過去をふり返ることになります。
で、もしも宇宙人の存在を信じていて、(なんとなく)宇宙人に誘拐された可能性が浮上してきた場合、それを一生懸命思い出そうとします。
この「一生懸命思い出そうとする」という行為は、「(わずかであるが)その可能性を信じた状態で、想像・妄想をくり返す」ことと同じなわけですから、フォールメモリーになる条件が完璧に揃っています。
そうしている内に「ただ そんな気がする」だったのが、リアルな「感覚」のようになっていきますし、
それらしい証拠のようなものも見つかってくる(正しくは「強引に こじつける」)が故に、フォールスメモリーとして定着していきます★
とにもかくにも
「現状の理由」を過去から探しだすことは、ほぼ毎日行われる とても日常的な行動です。
UFOの件は極端ですけども、こういった感じで「現在と過去のツジツマを合わせるために」フォールスメモリーを創ってしまうことがあるんですよ、というお話でした*
トラウマやオカルトな記憶について、思った以上に内容がボリューミーになってしまったので
個別に記事を公開いたしました↓
「トラウマの正体とは|自分を「守るための」記憶のメカニズム」
そもそもヒントが間違っていたら・・・
つづいて 原因が、自分の外にある例「事前情報の影響」について〜
これは何かを思い出そうとする際に「思い出すためのヒントや 手がかりになること」が、その記憶に影響を与えるというお話です。
わかりやすく極端な話をすると。。。
2020年の夏にバーベキューをした時の写真や動画を見てから、
2018年のバーベキューの様子を思い出そうとすると、2020年の様子が重なってしまい、似た思い出になる可能性があるってことです。
もっと言えば、ついでに同じメンバーでカラオケにいった時のことを思い出そうとすると、「バーベキューの時の雰囲気」がカラオケにいった時の雰囲気(記憶)に反映されてしまうこともあります。
(たとえば 本当はカラオケは盛り上がっていなかったのに、バーベキューの盛り上がった雰囲気で上書きされたりとか)
ちなみに 真犯人の顔に、別の人の顔を合成してしまったウォルター事件は、このパターンです。
(警察が捜査をする際に、事件とは関係ない近所の人の顔写真を被害者に見せることがあった)
補足:他人に記憶を埋め込む
こういった記憶の仕組みから、フォールメモリーを「他人の頭の中に埋め込むことができる」ことも研究の結果からわかっています。
ただし、埋め込んだ記憶を「消す方法」が確立していないため、近年では この研究をすすめることは(道徳的に)難しくなっているそうです。
その理由は、あまりにも簡単に記憶を埋め込むことができることと
実験後にタネ明かしをしても、被験者が「そんなバカな!これは私の家族や友達との大切な思い出だ!」 と困惑してしまったり
時には、今までの人生を壊してしまうほどに強固な、悲しい記憶となってしまうからです。。。
・ぷち補足
悪意はなくとも、このパターンでフォールスメモリーが定着してしまう場面は、日常でもあります。
・・・というか、メチャクチャ多いと思う。
ただ、これについてはデリケートな内容だと個人的に思っているので、くわしい解説はせずに要点だけを紹介いたします〜
(だって これを理解するってことは、他人の記憶を改ざんできるようになるのと同じことだから)
たとえば、あなたの過去について質問する人(過去を思い出させようとする人)がいたとして。。。
質問者が言葉でも写真でもCGでも、何か「イメージの素」となるようなものを先出しして、
あなたが それに関連した想像をしやすくなってしまうと、たとえ ありもしないことでもフォールスメモリーとして定着することがありますよ
ってこと〜
本当はここが とても重要なポイントなのですが、これ以上の解説はいたしません★
余談:存在しない「みんなの思い出」
もしもクラス会で「誤った記憶」を持った人が、その誤った記憶をもとに思い出話をはじめたとして
その影響で、ほかの誰かの記憶が書き換わり「あ〜そんなこともあったよね〜」と相づちなんて入れてしまったのなら、
その相づちを聞いた他のみんなも「あれ?そうだっけ・・・?でも、まぁ言われてみれば そんな気もするな」と連鎖(同調)で想像し、フォールスメモリーを生成してしまえば。。。
「だれ1人として体験していない思い出話」で、いつの間にか クラスの全員が盛り上がっている、なんてことも。
・ぷちぷち補足
フォールスメモリーが定着するまで時間がかかる人もいるので
短時間で、全員(1人残らず)の記憶が書き換わることは難しいかもしれません。
・・・まぁ同調の効果が働くし、僕としては充分あり得ると思うけど。
書き換えには目的がある☆
日常的に それが起こっている理由、つまり「なんのために脳は記憶を書き換えているのか」についても、今回説明するつもりだったんですけど
またしても話が長くなってしまったので、これもまた次回に説明いたします〜
超簡単に言えば、自分にとって最も大切なのは「現在の自分」なので、過去も「現在の自分にとって都合がいいもの」に書き換えてしまった方が良いってことかな*
あと「トラウマの記憶は自分で創っている」という話もいたします!
てことで続きはコチラ↓
「イヤな記憶を消す方法|なぜ現在を変えると過去も変わるのか」
まとめ
記憶の書き換わりは「過去を思い出そうとすること」から はじまる。
その思い出そうとする過去が 間違った内容であることに気づかず、そのままイメージしてしまうとフォールスメモリーとなることがある。
思い出そうとすればするほど(くり返し想像するほど)、フォールスメモリーが定着する可能性は高くなっていく。
なぜ「間違った過去」を思い出そうとするのかと言えば、
自分にとって最も大切なのは「現在の自分」なので、過去も「現在の自分にとって都合がいいもの」にしておく(書き換えてしまう)方が良いからである。
また「ツジツマ合わせ」や「事前情報の影響」などの原因も考えられる。
ツジツマ合わせとは「現在の状況と、過去の出来事のツジツマを合わせるために」フォールスメモリーを創ってしまうこと。
たとえば、今自分がこんな悩みを抱えているのは、あの時のあれが原因なんだ(だから仕方ない)と 自分を納得させるために、存在しない過去を創り出したり。
(現在の自分が苦しいのは過去の出来事のせいである、と 思い込んでいることが多いですが
冷静に分析していくと「現在の自分をそういう状況に置くために、過去を利用している」という、逆の結果に行きついてしまうことがあります)
事前情報の影響とは「思い出そうとする際に、間違ったヒントや手がかりを得てしまったために」それが記憶にも反映されてしまうこと。
たとえば、5年前の同窓会にA君が出席していなかったとしても、
「A君も一緒に写っている別の飲み会」の写真などを見せられながら「同窓会の時のA君、超おもしろかったよな〜」と言われたりすると、
「A君のいない同窓会」と「A君がいた別の飲み会」の記憶を合成して
「A君がいた同窓会」というフォールスメモリーを創り、それが定着する可能性がある。
過去を思い出そうとするキッカケは 日常でいくらでもあるわけなので、それだけフォールスメモリーが定着してしまう機会も多い。
もちろん なんでもかんでも想像しただけで、フォールスメモリーになるわけではございません☆
ただの妄想だと自分でわかっている限り、フォールスメモリーになることはありませんのでご安心を(^^)
はい、以上〜
記憶を書き換わってしまうメカニズムを探ってみたら、けっこう衝撃的な事実で驚きましたよ日記、でした!
あ、念のため言っておきたいのは、僕は僕らの過去を否定したいわけではございません。
この記事を書いた意図も、また次回に〜
あなたの思い出は本物か?
本当は、フォールスメモリーを他人に埋め込む方法とか、記憶の研究では どういった実験が行われて どんな結果が出ているのかとかも、くわしく書きたかったんですけど
内容の刺激が強いように感じて、僕のブログのコンセプトと離れすぎていると思いましたので省略しました。
今回の話は 警視庁科学捜査研究所で努めていた、臨床心理士(犯罪心理専門)の越智 啓太さんの著書「つくられる偽りの記憶」を参考にさせていただきました(^^)
こちらの本には 研究や実験の内容はもちろん、ただの想像が記憶にすり替わっていく より詳細な過程、日常のどんなシーンでそれが起こっているのか、前世の記憶はどこから来るのか などなど。。。
記憶のメカニズムの それはそれは濃ゆ〜い話がたくさん詰まっております*
興味がありましたら、ぜひ読んでみてください(^^)
僕が参考にした本はこちら↓
最後までお読みくださり ありがとうございました*
この記事が すこしでもお役に立ちましたら 嬉しいです☆